アタシが、そいつの歌を生で観たのは、たった一度きり。
もう15年くらい前のことかな…。
開場前に、スッと横を通り過ぎて中に入っていった事に気付いた時は、すっごく悔しかったなあ。
直接話せるかもしれない機会だったから…。
この話、前にも書いたかもしれないんだけど、改めて、書かせてね。
だからさ、その夜、MCの合間に、思い切って「デビュー5周年、おめでとうございます!!!」って叫んだんだ。
そしたらさ、「ああ…。数えてませんでした。」って返ってきて。
それは、うつむき加減でぶっきらぼうではあったけれど、嬉しさの照れ隠しに、見えたんだ。
…その時は。
その日のライヴで、まだタイトルも決まってないんだけど、って披露してくれたのが、これ。
「I LOVE MOON」
すれ違った夜には 降り出した雨には
僕の気持ち届いてる 君はどこにいるんだろう
空に浮かんだ君の大好きなお月様 一人眺めて…
この頃、すでにもう、歯車は崩れかかっていたのかもしれない。
けれど、そんな事、知る由もなくて。
アタシは、アタシ達は、その優しさにずっと包まれていられると、信じていたんだと思う。
“信じる”なんて、なんて難しくて、なんて馬鹿らしくて、なんて素晴らしいことだなんて。
今なら、少しは、分かるようになったつもりだけれど。
今も“僕の気持ちが届いている”とは、もう、思わない。
信じられる要素は、もはやどこにもない。
ただ傍観者でいることだけしか、アタシはしない。
だけど、もし届くのならば、1つだけお願いがあるんだ。
遠い空の下で苦しんでいる彼女を、もうこれ以上、悲しませないで。
ここも遠い、大阪の空の下。
今夜は曇り空で、せっかくの月は見えそうにないけれど。